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【第7回】目の難病から加齢による「フレイル」まで。幹細胞点滴がもたらす全身ケアと予防医療の可能性

再生医療とは、患者様ご自身が本来持っている細胞の力を活用し、組織の修復をサポートする新しい医療の形です。

今回は、これまでの特定の臓器や血管へのアプローチからさらに視野を広げます。

失明の原因にもなり得る「目の疾患」、加齢に伴う全身の衰えである「フレイル」、そして「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」などの神経難病に対する、細胞レベルからのアプローチについてまとめて解説いたします。

「最近、なんとなく疲れやすい」「少しずつ体の機能が落ちている気がする」と感じている方へ、将来の健やかな生活を保つための「予防医療的なケア」としての側面についても説明いたします。

 

■ 視力を司る「網膜」と「視神経」のダメージとは

 

私たちの目は、カメラのフィルムの役割を果たす「網膜」と、その映像を脳に伝える「視神経」によって物を見ています。

加齢黄斑変性(AMD)、緑内障、糖尿病網膜症といった目の疾患は、加齢や血流の悪化、糖尿病などが原因でこれらの神経細胞がダメージを受ける病気です。

網膜や視神経は、脳と同じ中枢神経の一部であるため、一度強いダメージを受けて細胞が失われてしまうと、自己再生することが非常に難しいという特徴があります。

病気が進行すると、視力の低下や視野の欠損、物がゆがんで見えるといった症状が現れ、最悪の場合は失明に至る恐れもあります。

現在の標準的な治療(目薬や眼内への注射、レーザー治療など)は、病気の進行を遅らせることが主な目的ですが、すでにダメージを受けて弱っている細胞そのものを保護し、機能を維持するための新たなアプローチが長年求められてきました。

 

■ 幹細胞が目の奥に届き、神経細胞を保護するメカニズム

 

このような目の疾患に対し、残された視機能を維持し、進行をできる限り緩やかにするための新しい選択肢として幹細胞治療が注目されています。

患者様自身のお腹の脂肪を採取し、専門施設で大切に培養した自己脂肪由来幹細胞を、点滴(幹細胞点滴)によって静脈から投与します。

「腕の静脈からの点滴で、目の奥まで届くの?」と疑問に思われるかもしれませんが、血液に乗って全身を巡る幹細胞には、体の中でダメージを受けている部位が発するSOS信号(炎症のシグナル)をキャッチして、自らその場所に集まる性質(ホーミング効果)があります。

目の奥の網膜や視神経に到達した幹細胞は、自らが新しい細胞に置き換わろうとするだけでなく、周囲の弱った細胞に対して神経を守るための神経保護因子や成長因子を放出します。

神経保護因子や成長因子が、ダメージを受けた細胞の死(アポトーシス)を防ぎ、目の中で起きている異常な炎症を穏やかに鎮めることで、視力の維持や病気の進行を遅らせるサポートをすると考えられています。

また、糖尿病網膜症では、もろくなった網膜の微小な血管を安定化させる働きも報告されており、これまでの治療法を補完する新たな希望となっています。

 

■ 「最近急に老け込んだ…」と感じたら。

 

特定の病気ではないけれど「最近とても疲れやすい」「体重や筋力が落ちた」「歩くのが遅くなった」といった、加齢による心身の衰え(身体的フレイル=虚弱)についてお話しします。

フレイルの根本的な原因の一つとして、近年の医学研究で注目されているのが「慢性的な低悪性度の炎症」です。

これは、強い痛みや熱を伴う急性の炎症とは異なり、自分では気づかないうちに体中のあちこちで「小さな炎症」がくすぶり続けているような状態です。

この「慢性的な炎症」が持続することで、正常な細胞がダメージを受け、老化が加速してしまうと考えられています。

さらに、年齢を重ねるにつれて、私たちの体の中にある自分自身の幹細胞の数や働きも低下してしまうため、このボヤを消し止めることが難しくなり、フレイルが進行してしまうのです。

 

■ ALSなどの神経難病に対するサポート

 

このような体内の異常な炎症や細胞の減少は、ALS(筋萎縮性側索硬化症)などの神経難病の進行にも深く関わっているとされています。

ALSは、脳から筋肉へ指令を伝える運動ニューロンが徐々にダメージを受け、筋力が低下していく病気です。

幹細胞点滴によって全身を巡る細胞は、運動ニューロンの周囲で起きている過剰な炎症を和らげ、神経細胞を保護する成分(BDNFやNGFなどの神経栄養因子)を放出することが分かっています。

魔法のようにすぐに元の状態に戻るわけではありませんが、細胞の働きによって神経のダメージを軽減し、進行を少しでも緩やかにするためのサポートとして、世界中で研究と臨床応用が進められています。

 

■ 全身の細胞をケアし、QOL(生活の質)の維持を目指すアプローチ

 

自己脂肪由来幹細胞の点滴投与は、体内のあちこちで起きている「小さな炎症」を見つけ出し、強力な抗炎症成分を放出して炎症を抑える働きが期待されています。

全身の炎症が穏やかになることで、細胞が本来持っている働きを維持しやすくなり、歩行速度や握力などの身体機能の維持、そして生活の質(QOL)の向上がサポートされることが、最近の臨床研究でも報告されています。

特定の疾患を治療するだけでなく、全身の細胞を若々しい状態に保ち、「予防医療的なケア」としても、再生医療は大きな注目を集めているのです。

 

■ 徹底した品質管理と高い安全性

 

このように全身に作用する治療と聞くと、幹細胞治療の副作用を心配される方もいらっしゃるかもしれません。

当院の治療は他人の細胞ではなく「患者様ご自身の脂肪細胞」を使用するため、アレルギーや拒絶反応といったリスクが極めて低く、これまでの多くの研究においても高い安全性が確認されています。

当院は、国の厳格な審査をクリアし、厚生労働省へ「第二種再生医療等提供計画」を提出済みの正式な再生医療を行うクリニックです。

細胞の培養は、東京の国立大学研究機関との共同研究により高度な技術を培った「CPC株式会社」へ依頼し、極めて厳格な品質管理のもとで製造された細胞のみを使用しております。

さらに、再生医療分野で豊富な実績を持つ「アヴェニューセルクリニック」からの技術指導等の提携を受けており、妥協のない安全管理のもとで治療を提供できる体制を整えております。

 

今回は、目の難病から全身のフレイル、神経疾患まで、身体が本来持つ修復力をサポートする幹細胞の幅広い可能性についてお話しいたしました。

治療やご自身の症状について少しでも気になることがございましたら、当クリニックまでどうぞお気軽にご相談ください。

 

参考文献

 

•An, W., et al. (2025). Mesenchymal stem cells and mesenchymal stem cell-derived exosomes: a promising strategy for treating retinal degenerative diseases. Molecular Medicine, 31, 75.

•Finocchio, L., et al. (2023). Recent Advances of Adipose-Tissue-Derived Mesenchymal Stem Cell-Based Therapy for Retinal Diseases. Journal of Clinical Medicine, 12, 7015.

•Nguyen, H. T., et al. (2024). Safety and efficacy of autologous adipose tissue-derived stem cell transplantation in aging-related low-grade inflammation patients: a single-group, open-label, phase I clinical trial. Trials, 25(1), 309.

•Zhu, Y., et al. (2024). Safety and efficacy of umbilical cord tissue-derived mesenchymal stem cells in the treatment of patients with aging frailty: a phase I/II randomized, double-blind, placebo-controlled study. Stem Cell Research & Therapy, 15, 122.

•Sykova, E., Cizkova, D. & Kubinova, S. (2021). Mesenchymal stem cells in treatment of spinal cord injury and amyotrophic lateral sclerosis. Frontiers in Cell and Developmental Biology, 9, 695900.

•当院提携先:アヴェニューセルクリニック 再生医療に関する臨床データおよび技術情報

•CPC株式会社 TOPs細胞 公式情報(品質管理および製造プロセスについて)

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